2009.11.27

蜷川実花展 地上の花、天上の色

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高校生のころ、ちょっとだけ読書家でした。
電車通で暇な時間を持て余していたので、電車待ちの間に本屋で物色→車内で読む、というのが日課でした。だいたい2日に1冊くらいのペースで読んでいたと思います。
とくに好きな作家もまだいなかったので、本を選ぶ基準といえばもっぱらジャケットの良し悪しでした。
暇さえあれば本屋でジャケ買いしてしまっていたのですが、そのころよく目につく作家の本がありました。

その人は桜井亜美という名前で、作風を一言でいえば「女子高生の書いたSF小説」。
現実離れした世界があまり好きではなく、本は数冊しか読んでいないのですが、その作家さんの作品の装丁がとてもきれいで、ジャケ置きされていると思わず手に取ってしまっていました。
その装丁というのが、ほとんど同じ女の子をモデルにしたコントラストの強い写真なのですが、本の装丁というのは落ち着いた色が多いので、ジャケ置きされているとほんとによく目立つデザインなんです。
そのモデルの女の子も、ものすごい美人というわけじゃないんですが、一度見たらちょっと忘れがたいような鋭角的な魅力を備えていて、その強い色彩の写真にとてもよく合っていました。

それで、何度か本を買ううちに、その表紙の写真を撮っている人が同じ人だということに気付きました。
その写真家さんは蜷川実花さんです。すごく有名な写真家さんなので、知ってる人も多いと思います。
名前を知ると、ファッション誌でもよくその名前を見かけることに気付きました。

いつか個展を見に行きたいなーと思っていたのですが、先日、西宮で写真展が行われていることを知り、行ってきました。
三連休の最終日だったのですが、個展の日程も終わりに近かったのであまり人はいないだろうと思っていたところ、予想外に賑わっていました。
開催されていたのは大宮美術館というところで、ちょっとアクセスしづらい場所にあるのですが、最寄り駅を降りた瞬間、明らかに同じ目的だろうという人が何人も前を歩いてました。
そして女の子率が異様に高い。美大通ってて写真が趣味な森ガール的風貌の可愛い女子たちがてんこ盛りです。
やっぱり蜷川実花は女の子に人気があるんだなあとか思いつつ、10分ほど歩いたところで到着したので、チケットを購入して中へ。

初期の写真から最新作まで、代表作を集めた写真展のようでした。
いくつかの部屋に分かれていたのですが、部屋によって展示されている写真のコンセプトが違う様子。
しかしどれも美しい写真です。

蜷川実花特有の、とろりとしたキャンディのような強い色がこれでもかというほど迫ってきていました。
息苦しさを覚えるような極彩色の世界です。
その中に、あの女の子をモデルにした一角もありました。
パンフレットによると初期にあたる作品らしいのですが、あのころ感じた美しさは変わらず。

ところで、知っている方も多いとは思うのですが、蜷川実花はPhotoshopなどを使った画像加工は一切行わないそうです。
本人いわく、そういった作業にうといからとかなんとか(うろ覚えです)。
普段Photoshopを使う作業に慣れていると、あの色彩がフィルムや光の工夫で表現できるなんて、ちょっと信じられないような話ですよね。
ちなみに、蜷川実花が好んで使っているのは、コダックのウルトラカラー100UCというフィルムだそうですが、これはすでに生産終了しているそうです。
デジタルカメラの普及でフィルムの需要が減ったからなんでしょうか。なんだか残念な気がします。

ひととおり館内を見て回り、最後にもう一度あの女の子のコーナーを覗き、ポストカードを購入して満足して帰りました。
大宮美術館では今週末まで開催しているようなので、予定の空いている方はぜひ足を運んでみてください。

asahi.com:朝日新聞社 – 蜷川実花展 地上の花、天上の色

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戸田@ドアズ社長ブログ

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